金平糖 kompeito [北九州市] 入江製菓 入江雅彦さん

わずか直径0.8mm程度の核が、生成過程でちょっとずつ角が生えて、ちょっとずつ大きくなり、最後には1.5cm程度になる金平糖を見ていると、作るというより育てる感覚に近く、愛おしい感じです。

当時の人が考案し、感じた「遊び心」を感じながら作り続けていきたいですし、たくさんの人が、その「遊び心」を感じられる世の中であってほしいと思います。

甘い口溶けは洒落気質の味わい

【歴史の晴れ舞台にも登場】

古くは、かの織田信長にも献上されたといわれ、「南蛮料理書」や「古今名物御前菓子秘伝抄」、「当流茶湯献立指南」、そして「日本永代蔵」など、江戸当時のそうそうたる書物にもその名が記されている「金平糖」。

伝来については諸説ありますが、16世紀後半、カステラなどとともに、南蛮菓子として平戸に伝えられたのが始まりともいわれています。

【平戸から大阪、そして北九州へ】

昭和九年、大阪で創業した「入江製菓」さんは、現在、北九州で金平糖を作り続けている会社。

二代目社長が大阪で金平糖づくりを学び、その後、石炭景気に湧く北九州に目を向け、進出したのだとか。

平戸に伝わった金平糖を大阪で学び、北九州で作る。お菓子一つをとっても色々な地域色が見えるところなど、全国から企業が集まり、産業のまち、工業のまちとして発展してきた北九州市そのものを映し出しているようです。

【金平糖に隠された遊び心】

近世には天下人に近いところで食され、近代では労働者に甘味として重用された金平糖も、現代では、入江製菓さんが北九州で唯一の製造業者となってしまいました。

「形が面白い、色がきれいといっても、材料は純度の高い砂糖のみ。味わいも当然砂糖の味ですから、色々なお菓子がある現在では、商品価値が伝わりにくいのは事実です」と話すのは「入江製菓」四代目社長の入江雅彦さん。

核となるグラニュー糖の粒を転がしながら、グラニュー糖を水で煮詰めた蜜を吹きかけ続け、14日間かけて作る手間に対して、金平糖の有難味は当時ほど華やかではないかもしれません。

とはいえ、入江製菓さんではオートメーション化や、型に流し込んで手間を省くことは考えていないとのこと。「金平糖の特徴でもある角は、蜜を何度も何度もかけて生成される砂糖の再結晶化の産物です。型に流し込むだけなら、再結晶はしません。確かに味は変わらないかもしれませんが、私は、この結晶化に意味があると思うんです。溶かしたものをまた固まらせるなんて、遊び心があるじゃないですか」と話す入江さんは、とても楽しそうでした。

現代の私たちも、かつての人たちのようにこの遊び心を感じることができれば、もう少し、心にゆとりを持てるのかもしれません。

金平糖づくり

毎日8時間、5分間隔で蜜を吹き付けます。

生成7日目の金平糖

生成7日目の金平糖。4~5日目くらいから角が生えてきます。

生成12日目の金平糖

生成12日目。大きさも1.2cm程度になり、完成間近。

生成14日目の金平糖

生成14日目。育った金平糖に色を吹き付け、完成。


(取材協力/入江製菓)